四百年の恋

 卒業式が始まった。


 卒業生の「総代」、つまり卒業生の中での成績最上位者は、もちろん清水優雅。


 卒業生代表として答辞を述べる。


 以前だったら十中八九、ふざけた言動で式の雰囲気を乱していたと想像されるのだが。


 この日は至って真面目な弁に徹していた。


 優雅らしくないというか。


 徐々に「らしさ」を失っていく優雅に、圭介は成長を感じる一方で寂しさも感じずにはいられなかった。


 (優雅くん)


 美月姫もまた、優雅の答辞を聞きながら、これまでの学生生活をひとり振り返っていた。


 中学受験を経て、平凡に過ぎ去った五年間。


 それに比べると高校三年次のこの一年は、まさに激動の日々だった。


 自分の人生の中で、最も変化のあった365日だった。


 大学受験という人生の節目のみならず。


 恋とか愛とかそういうのは無縁だと思っていたのに、友達より一足早く大人になってしまうとは、当事者である美月姫自身が最も予想外な出来事だった。