四百年の恋

***


 三月一日、卒業式。


 北海道のこの季節は、まだ冬の色が濃い。


 日没時間が徐々に遅くなっているのに気づき始め、真冬日もなくなり暖かさを感じた時、ようやく春の気配を感じることができる。


 厚手の生地の、紺色のブレザー上下。


 ワインレッドのネクタイ。


 中等部時代からすると、六年間慣れ親しんだ制服とも今日でお別れ。


 最後の制服に袖を通し、美月姫は学校の門をくぐった。


 何もかもが今日で最後だというのに、どうも実感がない。


 未だ受験の日々が完了していないのも、一因かもしれない。


 美月姫は先週、国立大前期日程の東大受験を終えている。


 だが合格発表もまだなのに加え、十日後には後期日程の受験も控えている。


 推薦入試合格組および私大組以外は、まだ四月からの進路が確定しておらずどうも落ち着かない。


 センター試験で失敗、二次試験でかなり好成績を収めない限りは、美月姫の東大合格はかなり厳しいものとなっていた。


 そんなプレッシャーの中、美月姫は短期間で見事立ち直り、二次試験では確かな手ごたえを感じていた。


 合否はセンター試験と二次試験のトータルで争われるので、どれほど挽回できているか。