函館近郊の、貧しい漁村の生まれの丸山乱雪。
親が苦労して稼いで、東京の有名私大の夜間部で学んだ丸山はいわば苦学生。
卒業後新聞記者となり、その取材を通じて時の総理大臣に気に入られて政界入りの道を見い出した。
昨今、政治家は二世・世襲議員が大部分。
そんな中、実力で現在の地位を築き上げた丸山乱雪の手腕はかなりのものだった。
一代で築いた地位。
自らの引退と共に手放してしまうには、あまりにもったいないと感じているようで。
(後継者は、清水優雅であるというのが巷の噂)
愛人の子といえ唯一の男子である優雅は、稀に見る頭脳の持ち主。
今から帝王学を授けて後継者に、いや自分が手にした以上のものを与えたいと思うのは父親としても当然なわけで。
(奴は決して、運命から逃れることはできない)
全てを逃げて、逃げ出しでもしない限りは。
(まさか)
圭介はふと最悪の事態を考えた。
(もしも運命というものが存在するのなら、奴は生まれる前から続く運命に目覚め、そして大村美月姫を……)
連れてどこかへ消えてしまうかもしれない。
冬の終わりの雪が、窓の外静かに降り続いていた。
圭介は何となく不安を抱えながら、外の雪景色を見つめていた。
親が苦労して稼いで、東京の有名私大の夜間部で学んだ丸山はいわば苦学生。
卒業後新聞記者となり、その取材を通じて時の総理大臣に気に入られて政界入りの道を見い出した。
昨今、政治家は二世・世襲議員が大部分。
そんな中、実力で現在の地位を築き上げた丸山乱雪の手腕はかなりのものだった。
一代で築いた地位。
自らの引退と共に手放してしまうには、あまりにもったいないと感じているようで。
(後継者は、清水優雅であるというのが巷の噂)
愛人の子といえ唯一の男子である優雅は、稀に見る頭脳の持ち主。
今から帝王学を授けて後継者に、いや自分が手にした以上のものを与えたいと思うのは父親としても当然なわけで。
(奴は決して、運命から逃れることはできない)
全てを逃げて、逃げ出しでもしない限りは。
(まさか)
圭介はふと最悪の事態を考えた。
(もしも運命というものが存在するのなら、奴は生まれる前から続く運命に目覚め、そして大村美月姫を……)
連れてどこかへ消えてしまうかもしれない。
冬の終わりの雪が、窓の外静かに降り続いていた。
圭介は何となく不安を抱えながら、外の雪景色を見つめていた。



