四百年の恋

 静香はずっと、嘘をついたことを後悔していた。


 罪悪感ゆえ、真姫がいなくなった後も、彼女は本当の気持ちを圭介に打ち明けられないままだった。


 同情、友情、愛情。


 様々な種類の感情を抱えたまま、二人の間の時間は緩やかに流れていった。


 「あの子たちを見ていると、私も怖くなることがあるの。また18年前の悲劇が繰り返されるんじゃないかって」


 「自縛霊だった福山とは違い、清水は生身の人間だ。何も問題は、」


 「違う。私が言ってるのは、あなたのことよ」


 「俺の?」


 静香は頷いた。


 「俺がどうなると?」


 「……」


 静香は口をつぐんだが、圭介は彼女の言わんとしていることを理解した。


 18年前の繰り返し。


 いや、正確には四百年前と言うべきか。


 愛し合う若い二人。


 権力や周囲の妨害。


 女に横恋慕する、別の男。


 引き裂かれる二人。


 互いの想いを貫き、破滅の道を選ぶ二人。


 一人取り残され、後悔の波に襲われる男……。