四百年の恋

 考えれば考えるほど分からなくなる。


 悪いほうに悪いほうに考えてしまう。


 そろそろ学校に行く準備をしなければ。


 圭介はベッドから出て、出勤の支度を始めた。


 今日もまた、普段通りの毎日が始まる。


 季節はもう秋。


 昼間は暖かくても、朝晩は暖房が恋しくなり始める頃だ。


 三年一組という、伝統の進学クラスの担任である圭介の忙しさは、日々増してくる。


 毎日の生活指導に授業、進路指導、そして部活など、一日中学園内を走り回っている。


 美月姫の様子を観察したり優雅の動向を監視しているうちに、一日はあっという間に過ぎていく。


 ……。


 その夜。


 「日に日に真姫に似てきて怖い」


 街外れの居酒屋。


 仕事帰り、圭介は同僚の静香と飲みに来ていた。


 初芝静香は大学時代の同級生。


 卒業後、圭介は若干の浪人期間の後、現在の紅陽学園の母体である女子高に勤務し始めたのに対し。


 静香は大学院に進学した後、一足遅れて教員の道を歩んだ。


 勤務先は、聖ハリストス学園。


 氷の美貌の彼女は男子高内で、男子生徒から畏れと憧れが混じった視線を多く浴びていた。