四百年の恋

　それが元で後日真姫を手に入れることができたので、不運な事故だったにせよ圭介はさほど自分不幸だとは思わなかった。


　たとえひと時でも、それが贖罪とあきらめの気持ちからだったとしても、真姫と共に生きることができたから。


　だけど最近、気になっていることがある。


　真姫を強引に抱こうとしたのは、一度のはずなのに。


　どうしても他にも同じ体験をしているような気がしてならない。


　一度きりとはいえ、若気の至りの一言では片付けられない。


　いくら愛するがゆえだったとしても、嫌がる女を押さえつけ、強引に我がものにしようとした過去は消せない。


　生徒に性犯罪に注意を促す説明をしている時など、あの時の真姫の恐怖と嫌悪に満ちた顔をどうしても思い出してしまい、未だに胸が痛む。


　その後紆余曲折を経て、恋人としての日々を満喫できるようになったのだけど。


　どれほど愛を注いでも、圭介の胸から罪の意識は完全に消えることはなかった。


　それに加え、あの時以外にも真姫の心を踏みにじって奪うような体験があったという記憶が消えない。


　だがいつのことか思い出せない。


　いや、それ以外も同じことかもしれない。


　こちらは深く誰よりも愛していたつもりでも、真姫にしてみれば何もかもが苦痛だったのかもしれない。