四百年の恋

 美月姫はそんなことをふと考えながら、でも優雅に聞くことはできないので、差しさわりのないような返信の文面を作成した。


 「私は、親戚が来た時に家族と出かけるくらいかな。ほんと美味しいよね。いつかプラチナコースにチャレンジしたいな。今はもう帰宅して、明日の準備をしています。受験勉強もあるし、学校の予習もしなきゃならないので、大変だよね」


 会話が続くように期待して、第二弾を送信。


 だが今度は、返信が届けられることはなかった。


 30分くらい黙って机の前の椅子に座って返信を待ちわびていた美月姫は、もう返事は来ないとようやくあきらめがついて、お風呂に入る準備を始めた。


 「……」


 今夜も寝る前に、布団にくるまって美月姫はあれこれ考える。


 今日、優雅に偶然出会えた奇跡。


 含みがあるように思えてならない、丸山乱雪の言葉。


 テレビでは幾度となく目にしているけれど、直接会ったのはもちろん初。


 あれこそがカリスマ性というのだろうか。


 支配する者と、支配される者。


 世の中にはその二つの人種が存在していることを、実感させられる。


 丸山幹事長が身にまとったオーラから、その二つの区分は生まれながらに定められているのだと思い知らされる。


 そして美月姫は、優雅のことを考えた。


 いつか優雅も、そのオーラの中に連れ去られていく日のことを。