お盆が終わると、もう新学期。


 たった十日。


 十日会わなかっただけなのに、この違和感は何なのだろう。


 圭介は不思議な感覚だった。


 相変わらずの、三つ編みに眼鏡という、昔ながらの優等生っぽい風貌。


 クールな受け答え。


 いくら亡き最愛の真姫の面影を宿しているとはいえ、近寄る隙のなさはこれまで通り。


 彼女のどこが以前と違って見えるのか、圭介にも答えは出せなかった。


 (卒業まで、あと半年ちょっと)


 圭介は壁に貼られた年間カレンダーに目をやった。


 まだ半年もあるように見えて、受験で徐々に慌しくなってくるし。


 年明けは登校日も少ないから、そばで彼女に接することができるのもあとわずか。


 (卒業式が終わったら……)


 卒業を境に、教師と教え子という関係は終了する。


 だが教師と教え子だったという事実は、永遠に消えることがない。


 たとえ卒業後だとしても、何か問題を起こしたなら。


 つまり美月姫との関係が、教師と教え子という一線を越えてしまったとしたら。


 非常にまずい立場になる。


 いくら「そういう関係になったのは卒業後だ」と主張しても、当然疑われるだろうし、信じてくれない人も多いだろう。