美月姫は、先ほど道に迷った際に遭遇した、武家の御曹司風の人物を思い出した。


 (姫が暗闇の中、途方に暮れているから、助けに来たのだ)


 なぜか自分を「姫」と呼び、手を差し伸べた若者。


 優雅によく似た声と顔。


 見知らぬ奇妙な男性のはずなのに、どこか懐かしく感じられ、そして信じられる。


 (あの人に会っていたからかもしれない。私が何の躊躇もなくユウガくんに……)


 抱かれたのは。


 ……。


 その後一同部屋に戻り、しばしおしゃべりに花を咲かせ。


 今日一日模擬試験に水源地探検と、行事目白押しでさすがに疲れたので、さっさと就寝タイムに突入した。


 「……」


 寝るまでの間、美月姫はベッドの中、シーツに包まりながらあれこれ考えていた。


 (あの男の人は、いったい)


 自分を「姫」と呼んだ、優雅によく似た着物の男性。


 どこか懐かしく、そして悲しい。


 不思議な感覚に美月姫は包まれていた。


 そして未だに体に残る、初体験の痛みと違和感。


 慣れない内は苦痛を伴い、快楽を感じる余裕はないと、噂では聞いていたけれど……。


 想像以上だった。


 ズキズキと痛む体の奥。


 それと同時に……髪に触れられた時に胸を貫いた、言葉にならない充実感。