四百年の恋

 「あ、ちょっとのぼせたかも」


 理由付けをして美月姫は、友人たちと脱衣所に戻るタイミングすらずらす目的で、浴場を後にした。


 「……」


 急いで脱衣カゴに向かってバスタオルを手に取り、体に巻きつけてほっと一息。


 その時ふと横に貼られた鏡に映った自分を見た。


 コンタクトを外しているのと湯けむりとで、ちょっとぼやけた世界。


 そこに映し出された自分は、一見昨日までとは同じようでいて。


 それでいて体は、どことなく違う雰囲気を帯びてしまったような錯覚。


 全てを覆い隠すかのように、美月姫は急いで服を着た。


 服を着た後、バスタオルを肩にかけたままの美月姫は再び鏡の前へと向かった。


 髪にまとわり付く水分をバスタオルで拭う。


 だいぶ水分が吸収されたので、タオルを脇に置き、備え付けのドライヤーに手を伸ばそうとしたその時。


 ふわっ。


 誰かが美月姫の髪の毛を撫で、指が首筋に触れる。


 ぞくっとするような快感。


 「いやっ」


 美月姫は思わず声を出してしまった。


 「あ、ごめん。びっくりした?」


 背後にはバスタオルで身を包んだ女友達が立っていた。