四百年の恋

 「あれ? ほんとだ。十分くらいしか過ぎていない」


 仲間の携帯で時刻を確認した優雅も、同じ疑問を持ったようだ。


 「迷子になってる間、もっと長い時間のように感じたんだけどねー」


 優雅は仲間たちと笑い合っている。


 (たった十分……?)


 ちょっと離れた場所で優雅の発言を聞いた美月姫も、釈然としなかった。


 (だってさっき、あんなにずっと二人で……)


 抱き合い、求め合っていた。


 何時間にも感じられた。


 それがたったの十分の間の出来事とは、美月姫には到底信じられなかった。


 (幻……?)


 幻想的な霧の夜の出来事、幻だったような気もする。


 だが身体中に残された痕跡と痛み。


 初めての経験の代償。


 それらが皆、さっきのことは夢などではないと告げている。


 でも二人が森を彷徨っていたのは、わずか十分程度であったというのもまた事実。


 友達の時計を見せてもらい、それは証明された。


 別世界を旅していたような感覚に揺れながら、美月姫は帰路についた。