四百年の恋

 「美月姫。大丈夫だったの?」


 女友達が心配そうに眺める。


 「う、うん。迷ってびっくりしたけど。すぐに清水くんを見つけたから……」


 あまりジロジロ見られると、先ほどまでとは変わってしまった自分に気づかれるような気がして美月姫は不安だった。


 「何度電話しても、二人とも出ないし。事故とかじゃなきゃいいけどって心配もしたんだぞ」


 「悪い悪い。大村さんはバッテリー切れ。俺はたまたまホテルに携帯置いてきたっていう不運が重なったんだ」


 明るくおどける優雅。


 一同安心して帰路についた。


 「よかった、最終バスに間に合った」


 「え?」


 友人の一言に、美月姫は驚いた。


 最終バスは、急いで回っても時間ギリギリだったはず。


 さっき深い森の中で、時間を忘れて抱き合っていたはず。


 仲間たちが心配していることも、最終バスの時間が迫っていることも気にせずに。


 ただ感情に流されるままの行為。


 終わってしまえば束の間にも思えるけど、求め合う時間は果てしなく長く感じたのに。