四百年の恋

 「え、模試? 普通だったよ。悪くはなかったけど、すごいできたってわけでもない」


 「じゃ現状維持ってとこかな」


 「現状維持なら、また二位だね。ユウガくんがトップで。ユウガくんは……。今回も当たり前にできたんでしょ。羨ましいな」


 「羨ましい?」


 「だって。隣の席だから分かるんだけど、一日中勉強ばっかりってわけじゃないのに、気が付いたらいつもトップ。私とは頭の出来がちがうのかな」


 「生まれつきなんだ」


 「生まれつき?」


 「そう。パソコンとかの容量の単位で、今はギガバイトが普通でしょ。それが俺はたまたま、生まれつきテラバイト(1テラバイトは1,024ギガバイト)だっただけ」


 「テラバイト、か……」


 他の男子が口にすれば自慢に聞こえるような台詞も、優雅の発言ならばナチュラルに美月姫に響いた。


 「いいな。それだけ頭の容量が大きいってことでしょ。どんなに詰め込んでも、私たちみたいに飽和状態にならない」


 「……だけど、いいことばかりじゃないよ」


 「どうして?」


 「みんなは新しい知識を得たら、使わないものや古い知識を順次忘れていけるでしょ? 俺はそれができないんだよね」