四百年の恋

 「そろそろ……大丈夫? 戻ろうか」


 優雅は立ち上がった。


 「まだ痛いよね……?」


 美月姫が先ほど苦痛に耐えながら自分を受け入れていたことに、優雅は当然気づいている。


 「もう平気。そろそろ戻らないとみんな心配するし」


 二人とも腕時計をしない習慣なのに加え、携帯電話で時刻を確かめることも不可能なので、今果たして何時なのか分からない。


 だがかなりの時間が経過してしまったのは明々白々だ。


 どれくらいの間、二人は芝生の上で夢中になって抱き合っていたのだろうか。


 時の流れすら忘れるくらいに。


 しっとりと水分を含んだ髪。


 夜露に濡れた服。


 そして……体の隅々に残された初体験の痕跡に、美月姫は戸惑いながら歩き始めた。


 「手、繋ぐよ」


 有無を言わせず優雅は美月姫の手を取った。


 懐中電灯などもなく、暗闇にもう目は慣れたとはいえ目視が頼りの現状。


 またはぐれてしまわないようにとの、優雅の配慮なのだろう。


 だが美月姫は、繋がれた手と手の温もりにこの上なく緊張していた。


 先ほどまでもっと深く激しく繋がっていたにもかかわらず、今はささやかな手の温もりだけでもドキドキする。


 (本来はこういう段階を経て、進んでいくはずなのに)


 美月姫は無言で歩いている最中、いろいろ考えていた。


 何の経験もないまま、いきなり肉体関係という領域に達してしまった自分に対し、驚きを隠せなかった