四百年の恋

 「どうしてって言われても」


 優雅は苦笑いを浮かべながら答えた。


 「ふとそんな気分になった。それだけのことじゃないの? 俺も君も」


 その行為に愛などない。


 そう宣言されたような気がして、美月姫は少し寂しさを感じた。


 (私も……分からない。どうしてこんなことになってしまったのか)


 「ほんと、どうしてこんな展開になっちゃったのか謎だね。霧の魔法にかけられたみたい」


 優雅は未だに晴れない霧の向こうの、満月を見上げながらつぶやいた。


 「魔法……」


 まさに、魔力にかけられたみたい。


 (いつもの私なら、こんなことするわけがなかった)


 美月姫は思う。


 こういうことは、お互い好き合った男女が、それなりの順序を経て。


 双方の合意の上で行なわれる、愛の行為だと信じていた。


 (なのに、勢いでこんなことしちゃうなんて……!)


 自分自身が信じられなかった。


 その場の成り行きで体を安売りするような子を、最も軽蔑していたはずなのに。


 (愛してもいない相手と……)


 夢だと信じ込みたかったが、体の芯から伝わってくる絶え間ない痛みが、これは夢ではないと思い知らせる。