四百年の恋

***


 「ごめんね。優しくできなくて」


 どれくらいの時間が経っただろうか。


 依然として白い霧が辺りを包む中、その行為を終えた清水はゆっくりと体を離した。


 「……」


 美月姫はしばらく体を動かせずにいたが、やがてゆっくりと上半身を起こし乱れた衣服を整え始めた。


 言いようのない気だるさ。


 体が震える。


 火照った体を、ひんやりとした霧のヴェールが急激に冷やすから。


 そして……。


 「こっちも、余裕なくてさ」


 一足先に衣服を整えた清水が、美月姫の髪に絡まった草を取った。


 髪の毛ごしに、清水の温もりを感じる。


 先ほどまではこの体の中に、その熱を受け入れていたというのに。


 今はわずかに伝わってくる熱にすら、美月姫は動揺していた。


 (どうしてこんなことに?)


 美月姫は嵐のように過ぎ去った時間を振り返った。


 闇の中、道に迷った。


 例えようのない不安と孤独。


 清水と再会した安堵感と安心感に煽られる形で、勢いで身を任せてしまった。


 どちらから誘ったとか、そういうことは分からない。


 視線が重なったその瞬間、お互い誘い合う形で体を重ねた。


 言葉は一つもなかった。


 無言で互いが互いを求め合うだけ。


 水源地脇の人通りの絶えた森の片隅、草の上にて、二人は何かに導かれるままに求め合い、結ばれた。