四百年の恋

 「待って……!」


 美月姫の声もまた、闇の中へと消えていく……。


 「消えないで! お願い!」


 虚しく叫び声があたりに響き渡ったその時、


 「あ、大村さん」


 「!」


 急に誰かが現れた。


 美月姫はかなり驚いたのだけど、名字を呼ばれたということは。


 「清水くん……」


 安堵した。


 「よかった。この霧の中、迷子になっちゃったみたいで、焦ってたんだ」


 清水が美月姫に向かって、ほっとした笑顔を浮かべた。


 「実はさ、先回りしてみんなを驚かせようと、隠れて待ち構えていたんだ。でもどんなに待っても、みんな現れないんだもん。そのうち霧が濃くなって来て」


 清水はおどけて舌を出した。


 「私も、みんなとはぐれちゃって……」


 美月姫は安心したのだけど、先ほどまでの焦燥が表情に色濃く残されていた。


 「……怖かった?」


 「当たり前でしょ。土地勘もない上に、方角も分からなかったんだから」


 「大村さんって、不測の事態にも全く動じない人かと思っていたんだけど」


 「動じないわけないじゃない。どっちに行けばいいのか分からないし、急に変な人が現れるし」


 「変な人?」