四百年の恋

 「……」


 どちらに進んでも、らちが明かなかった。


 白い闇がどんどん深まっている気がする。


 依然として仲間たちの気配すら見当たらない。


 (どうしよう……。仮に誰かいたとして、悪い男とかだったら……)


 先日コンビニで目にした、性情報の氾濫した雑誌を思い出した。


 (怖い……)


 自分の身をどうやって守ろうか。


 今いる場所すら分からない状態で、どうやって……。


 途方に暮れるしかなかった。


 「誰か……!」


 美月姫はついにうずくまった。


 どんなに目を凝らしても何も見えないのなら、いっそ目を閉じてしまおうと思った。


 「……?」


 すると何かが聞こえてきた。


 遠くから雅楽の調べみたいなものが響いてくる。


 そして。


 「全く姫は……。お転婆がすぎるぞ」


 (姫?)


 美月姫は驚いて顔を上げた。


 「し、清水くん!?」


 そこには清水が立っていた。


 「!?」


 いや、違う。


 清水には似ているが、もうちょっと年上で和服を着ている。