四百年の恋

 「うそでしょ……」


 嘘ではなかった。


 右も左も分からぬ場所で、美月姫は一人きり。


 さらに悪いことに、霧はさらに深まり。


 月の在処を隠してしまい、方角すら分からない状態に陥った。


 「誰か! ねえ誰かいないの!」


 美月姫は大声を上げた。


 だがその声は、まるで闇に吸い込まれているかのように。


 何の反応もなかった。


 (非常にまずい……)


 美月姫は辺りを歩き回った。


 でもさらに奥に迷い込んでしまいそうで怖かった。


 「あ!」


 暗い足元、段差に気づかず転倒。


 ジーンズ越しではあったものの、膝の周りがひりひり痛んだ。


 「どうしよう……」


 美月姫は学校以外の場所では、コンタクトレンズにしている。


 眼鏡の時よりも、視界がよくないという悪条件も加わった。


 どうしていいか分からず、しばらくの間周囲をさ迷い歩いた。