「吉野先生、引率じゃなかったね」


 「部活の練習試合があって、どうしても抜けられなかったらしいよ」


 美月姫のグループも、息抜きに散歩に出かけた。


 グループのメンバーの一人が、清水の友人と最近付き合い始めたようで……男女二グループが合体する形のグループを結成していた。


 ちょうど男女三人ずつの、計六人。


 そのうち二人はカップルなので、他の四人は男女に分かれて二人ずつで歩いている。


 「……帰りのバス、大丈夫なの?」


 「足早に一周すれば、最終には十分に間に合う」


 彼らの行き先は、大都会のきらびやかな中心部ではなく。


 誰かが「ホタルを見たい」と言い出したばっかりに、町外れのホタルが見られることで有名な水源地へと向かっていた。


 大人たちは車で来ているようだけど、彼らはまだ高校生なのでバスで移動。


 郊外ゆえ最終バスの時間も早いので、気をつけなければならなかった。


 札幌出身の美月姫も、親に連れられて訪れたことのある場所だった。


 だが幼かった頃のことであり、道のりなどは全く記憶にない。


 カップルの男子のほうが札幌の大学に通っている兄に去年連れて来てもらい土地勘があるということで、道案内は全て任せていた。