四百年の恋

　｢で……。美月姫はご近所の不倫騒動にショックを受けて、潔癖になっちゃったってこと？｣


　｢うーん……。あんな幸せそうに見えた家庭に裏があったなんて、子供心にもショックだったんだ。それから何となく、恋愛っていうものに対して、懐疑的になっちゃった気がする｣


　｢その家は、あくまでも特別な状況だったんだよ｣


　｢そうだよ。テレビドラマとかでよく不倫って出てくるけど、私は生まれてこの方、不倫してる人なんて実際に見たことないよ｣


　美月姫の友人たち、いや紅陽学園に入学してくる生徒たちは、比較的恵まれた家庭の子が多い。


　｢だから美月姫も、そんなに恋愛をむきになって否定しなくても……｣


　その時だった。


　｢みんなー、楽しそうに何の話題？｣


　｢！｣


　同級生の清水優雅だ。


　｢あ……｣


　そういえば清水の母親は、与党幹事長の丸山乱雪との不倫関係の末に清水を出産している。


　ここに一人、世の中に不倫というものが存在していることを証明している存在が……。


　｢いや、大した話じゃないよ清水くん。美月姫のご近所さんの、変な人の話｣


　｢そうそう、庭をジャングルみたいにして草ボウボウな、迷惑な住人の話｣


　慌てて話題を逸らした。