「ははは。そうだな。もしも二十歳ちょっとで子供が生まれていたら、な」


 口先では笑っていたものの、圭介は無表情のまま窓の外を眺める。


 そして過去を振り返る。


 二十歳ちょっと……つまりそう、真姫と付き合っていた頃。


 あの時すぐに結婚して子供ができていたら、確かに清水くらいの子供がいても不思議はない、と。


 「……もしかして俺、余計なこと口にしちゃった系?」


 清水が上目遣いで、圭介の顔を覗き込んでいた。


 圭介が突然無言になったので、心配になったようだ。


 「いや別に。お前の気にすることじゃない」


 「もう手遅れかも。このままじゃ気になって夜眠れそうにない」


 「そんなこと言ったって、夜になったらお前はきっと、いつも通り寝る時間を迎えてるもんだよ」


 「センセー、無理してるでしょ」


 圭介の動揺を、清水はちゃんと見抜いていた。


 「センセーが話して楽になるんなら、俺に話してみてよ。俺のことはもうたくさん知られてるんだから、今度は俺がセンセーのこと知りたいな」


 ……ありのままをさらけ出すかどうかまよったが。


 圭介は過去にあったことを、少しずつ語り始めた。


 誰かに話せば少しは楽になるような気がしていたからだ。