四百年の恋

 月光姫の悲恋物語は、オタク男の著作物により、知名度を上げ。


 共感したファンたちの来訪も相次いでいる。


 「福山、冬雅……」


 福山家第三代当主で、発展の礎を築いた名君だというのに。


 月光姫物語の中では、悪役。


 それもそのはず、月光姫に横恋慕した挙句、邪魔な弟を死に追いやったのだから。


 (はじめて月光姫の悲恋物語を耳にした時は、いい年して若い女に横恋慕した、いやらしいおっさんだと思ったのだけど)


 福山冬雅の頭部復元模型の目の前に立ち、圭介は冬雅を見つめながら考えた。


 発掘された冬雅の遺体を調査し、没年齢時点での容貌を再現しているので、そこに展示された頭部は老人のもの。


 (今なら冬雅の気持ちが、解るような気がする。人を愛する想いに、年齢など関係ない……)


 自分が二十歳そこそこだった当時は、冬雅のような青年というより中年に差し掛かった人間が、恋や愛だのに心惑わす有様を理解することができなかった。


 ところがいざ自分が、冬雅が月光姫を愛した当時の年齢に近づいてみると。


 人を好きになる気持ちに、年齢など関係ないって思えるようになってきた。


 (二十歳の頃も、今でも……。何も変わりはない)


 冬雅の復元模型を眺めながら、圭介はしみじみと物思いにふけった。