……。


 「素晴らしい。特に福山くんの古典への知識は卓越している。みんなも分からないことがあったら、福山くんに尋ねてみるといい」


 発表は無事に終了。


 教授からの評価も高かった。


 大成功。


 「成功を祝って、今度飲みに行こうか」


 福山に誘われた。


 発表終了と同時に疎遠になってしまうのが寂しいと思っていた真姫は、快諾した。


 すると……。


 「お前、最近ずい分あいつにべったりだな」


 福山のいない隙を見計らったかのように、圭介が言いがかりをつけてきた。


 「だって、発表の際ペアだったんだもん」


 「もう終わっただろ?」


 「終わっても、同じ講義を受けている仲間なことに、変わりはないでしょ?」


 「得体の知れない奴に過度に近づくのは、どうかと思うけど?」


 真姫はむっとした。


 たまに言葉遣いが古かったり、変わったところもあるものの、福山の穏かな言動はそばにいてとても居心地がよかった。


 「得体の知れないって……。一緒に授業受けてる人じゃないの」


 「でも奴は、正規の学生じゃない」


 「正規じゃなくても、きちんと書類審査受けて聴講を許可されてるんだから、そんな言い方」


 ガラッ。


 その時、福山が教室に入ってきた。


 やばいと思ったのか、圭介は話をやめた。


 「花里さん、帰ろう」


 真姫は圭介を残して、歩き始めた。


 「……!」


 追いかけたいところだけど、これから部活があるので時間がない。


 圭介は二人の去っていった方角をにらみつけた。