美月姫は真剣なまなざしで、圭介の話を聞き続けていた。


 「それが正しかったのか間違っているのか、死ぬまで答えは出せないだろう。そしてそれは、テストのように正解が存在するものでもない」


 「ならば回答は、私自身で探していくべきなのでしょうか」


 「大村は今まで、好きな奴っていなかったのか?」


 逆に圭介は、美月姫に問いかけた。


 「……男子なんて、うざくてうるさい程度にしか思っていませんでした」


 職員室で過去の担任教師が話していた通り、美月姫はこれまで全く男性経験はないようだ。


 「大村もいつの日にか、好きな奴とかができるかもしれない。その時改めて、今の俺との会話を思い出してみればいい。きっと違った風に考えられるはず」


 「私に好きな人が、ですか?」


 美月姫はたいそう驚いたような表情を、圭介に見せた。


 「想像もできません」


 「人生、明日のことでさえ何が起こるか分からないものだ。立場が変わってはじめて分かることもある」


 「そうなのでしょうか……」


 美月姫は実感がないようだ。


 まだ「愛」という言葉の深い意味を知らない。