「吉野先生、ゲーム練習のペア決めはどうしますか?」


 バドミントン部キャプテンの声で、圭介は我に返った。


 「あ、そうだな今日は……。ランダムにクジで決めるか」


 「分かりました」


 部員たちはクジを引き合って、番号順にコートに入っていった。


 自らが選手としてコートに立つことは、断念せざるを得なかったが。


 圭介は今、部活の顧問としてバドミントンに携わることができている。


 生活が荒れて、教員採用試験に不合格。


 翌年再度チャレンジするつもりで、卒業後は浪人する予定だった。


 ところが卒業前に、近郊の紅陽女学園(当時)から採用の話があった。


 免許を有している社会科教師として、そしてバドミントン部の顧問として。


 私立高校ゆえ、教員採用試験を経ずとも独自の選考で採用可能。


 圭介は無事採用され、紅陽女学園の社会科教師兼バドミントン部の顧問となった。


 当時は弱小部だった。


 お嬢様学校ゆえ、仕方のない面もあるが。


 しかしわずかな部員を鍛えているうちに、強化に成功。


 バドミントンは団体競技とは違い、小人数でも可能なのが功を奏した。


 結果を残すに連れて、実力のある生徒が中学受験を経てでも入学してくるようになり、やがて市内屈指の強豪に。


 そして本日に至る。


 共学化後も、変わらずに部を運営している。


 聖ハリストスのほうは顧問がいなかったため、バドミントン部はなかった。


 今後は男子も受け付けるようになったが、今年度入部した男子は弱くて女子に負けている。


 やがては男子部も市内屈指のチームに育て上げるのが、圭介の次の夢ではあるのだけど……。