四百年の恋

 「大丈夫!?」


 「危なかったな」


 木が倒れて土埃が収まった頃、急に揺れも止まった。


 同行していた仲間たちが、続々真姫と圭介の元に集まってきた。


 「ケガはしてない?」


 麻美が心配そうに覗き込んだ。


 「私は大丈夫」


 真姫は土埃を払いながら圭介を見つめた。


 全力で走ると、いまだに膝に違和感はあるものの、圭介にもケガはなかった。


 「あ~~~~っ!」


 近くにいたオタク男が、急に叫び声を上げた。


 「どうしたの?」


 静香が尋ねた。


 「あ、あ、あ、あそこに……」


 オタク男はガタガタ震えている。


 「あそこにどうしたのよ」


 「あそこに……人の骨が!」


 「えっ?」


 みんなが一斉に、オタク男の指差す方向を眺めた。


 「ほんとだ!」


 圭介の視界に、それは飛び込んできた。


 今倒れたばかりの、老木「薄墨」。


 そのめくれ上がった根元の下に、白骨は眠っていた。


 「けっ、警察を」


 慌てふためくオタク男。


 「待て、警察を呼んでも無駄だ」


 圭介がオタクを止めた。


 「な、なぜです。これは事件ですよ事件」


 「呼ぶならば考古学者じゃないのか? これは……福山冬悟だ」


 「え……」


 一同無言になった。


 先ほどまで辺りを恐れさせた亡霊が消えた途端、木の根元から白骨が現れたのだから。


 「冬悟……さま……?」


 福山冬悟の名前を耳にした途端、真姫は白骨のほうへと向かって歩き出した。


 確かめたいような。


 現実を目にしたくないような。


 ふらついた足取りで。