四百年の恋

 「……幼い頃より次期当主としての教育を受け、この上なく高慢に育っていた私は」


 その頃の冬雅は、何もかもが定められた自分の生き方に嫌気がさしていたという。


 自由に生きられないことに対する息苦しさと、居心地の悪さ。


 それのぶつけどころを見つけられず、自分にひれ伏すしかできない弱者を見下し、いじめるようなことをして、憂さ晴らしをしていたと告白した。


 そんな冬雅の数少ない息抜きの一つが、狩。


 その日も取り巻きたちを引き連れ、城の近くの野原や森を駆け回っていた。


 すると立派な角を持った鹿が。


 仕留めようと追いかけ、先回りをして弓矢を構えると。


 そこには可憐な娘がいた。


 「鹿が娘に化けたか」


 たまたま山菜採りに来ていた、若い娘だった。


 冬雅はたちまちその娘を気に入り、自分のものにしたのはそれから間もなくだった。


 身分と地位をちらつかせれば、娘もその親たちも逆らう術はなかった。


 冬雅はその村娘との関係を内密にしていた。


 何しろ先代の命令で、京の公家の姫との縁談が進んでいたから。


 「身分の高い正室を迎える前に、どこの馬の骨とも知れぬ娘との関係が公になれば、縁談にも差し支えがあっただろう」


 村娘の身分では格差がありすぎて、次期当主の側室にすら迎えることはできない。


 どんなに気に入っても、公にはできない。


 加えてその頃の冬雅は、やがて当主になった時のための教育、人の上に立つ者としての心構えしか教えられていなかった。


 ゆえに好きな娘への愛情表現の仕方も解らず。


 傷付け、奪うことでしか愛情を示せなかったという。


 そばにいてほしいことをどうやって伝えればいいか、それすら解らずに……。