四百年の恋

 「綺麗な石を、多数貢物として受け取った」


 冬雅は箱を開いてみせた。


 「こちらは金塊だ。これがあればそなたに、たくさんの贈り物が可能だ。ほしい物があれば言ってみろ」


 「何もありません」


 姫は即答した。


 どんな宝物よりも姫が望むのは、冬悟を返してほしいということ。


 (それが不可能ならば……)


 「何もない、か」


 冬雅は苦笑した。


 「どれほどの贈り物をすれば、そなたの心を手に入れることができるのだろうか」


 「私は、」


 「もしも私が天下をこの手に掴めば、そなたは私を愛してくれるか」


 「天下なんて、今さら」


 「世はまた乱世へと向かっている」


 冬雅は語り始めた。


 「我々福山家の当主は三代を経て、ようやくこの地の支配者としての地位を確立した」


 冬雅は福山家の第三代当主。


 「だが、どんなにこの地が栄えても、中央の者たちは我々のことを、辺境の支配者くらいにしかみなしてくれない。見下されてもいる」


 京の人々からすると、確かにこの蝦夷地ははるか北方の辺境の地にすぎない。


 「私はこの福山家の名声を、全国に響き渡らせたい。この地に京の都並みの繁栄をもたらしたい。そのためには少々無理でもせねば」


 「犠牲を払っても、構わないということですか?」


 「ん?」


 「福山家の発展のためになら、何かを犠牲にしても構わないと?」