***
……体調がなかなか回復しない月姫は、一旦明石の自宅に戻って療養することになった。
福山城下は、姫には空気が合わなかったのかもしれない。
周囲の人々の冷たい目も、じわじわと姫を苦しめていた。
精神的にもギリギリの状態だった。
慣れ親しんだ実家でゆっくり静養したほうがいいと、医師からの忠告もあり、最初は反対していた冬雅も姫の一時帰宅を了承。
「そんなには長く待っていられない。早く私の元へ戻ってくるんだ」
冬雅は姫の青白い頬に触れる。
別れ際、冬雅の肩越しに福山城を姫は見たのだが、それが今生の別れのような気がして仕方なかった。
そして福山城下から実家までの長い道のりを、輿に揺られる。
「姫、顔色が真っ青」
到着して輿から降りた姫の顔色を見て、母親は驚いた。
「長旅で疲れた。食事はいらないから、早く横になりたい」
平静を装ったものの、姫の足はふらついており、
「早く床の準備を」
母親は侍女に命じた。
布団が整うとすぐに、姫は部屋に急いで入ってふすまを閉め、布団に飛び込んだ。
「……」
乱れていた呼吸と動悸が、落ち着いてくるのを感じる。
布団に包まって、まだ夏なのに寒気がして冷たく感じる体を暖めた。
……実は少し前から、姫は体の異変に気がついていた。
親戚の姫たちや親しい友人たちが、妊娠初期に見せていた症状。
間違いなかった。
(殿がこのことを知れば、どんなにお喜びになることか)
だけど言えずにいた。
侍女や周りの者に勘付かれては、隠しきれなくなる。
それゆえ姫は、そばに仕える侍女にすら話していなかった。
(このままいつまでも、隠してなどおけないのに……)
……体調がなかなか回復しない月姫は、一旦明石の自宅に戻って療養することになった。
福山城下は、姫には空気が合わなかったのかもしれない。
周囲の人々の冷たい目も、じわじわと姫を苦しめていた。
精神的にもギリギリの状態だった。
慣れ親しんだ実家でゆっくり静養したほうがいいと、医師からの忠告もあり、最初は反対していた冬雅も姫の一時帰宅を了承。
「そんなには長く待っていられない。早く私の元へ戻ってくるんだ」
冬雅は姫の青白い頬に触れる。
別れ際、冬雅の肩越しに福山城を姫は見たのだが、それが今生の別れのような気がして仕方なかった。
そして福山城下から実家までの長い道のりを、輿に揺られる。
「姫、顔色が真っ青」
到着して輿から降りた姫の顔色を見て、母親は驚いた。
「長旅で疲れた。食事はいらないから、早く横になりたい」
平静を装ったものの、姫の足はふらついており、
「早く床の準備を」
母親は侍女に命じた。
布団が整うとすぐに、姫は部屋に急いで入ってふすまを閉め、布団に飛び込んだ。
「……」
乱れていた呼吸と動悸が、落ち着いてくるのを感じる。
布団に包まって、まだ夏なのに寒気がして冷たく感じる体を暖めた。
……実は少し前から、姫は体の異変に気がついていた。
親戚の姫たちや親しい友人たちが、妊娠初期に見せていた症状。
間違いなかった。
(殿がこのことを知れば、どんなにお喜びになることか)
だけど言えずにいた。
侍女や周りの者に勘付かれては、隠しきれなくなる。
それゆえ姫は、そばに仕える侍女にすら話していなかった。
(このままいつまでも、隠してなどおけないのに……)



