四百年の恋

 月姫はなかなか回復しなかった。


 というよりもむしろ、元気になろうという気力に乏しかったのかもしれない。


 こんな虚しい現世など、一刻も早く去ってしまいたいとすら願ったりもした。


 もしもこのまま回復しなかったら、冬悟の元へ行ける……という期待もあった。


 「姫さま、どうかお飲みください。さもなければ周りの者たちが、殿に叱られてしまいます」


 (私が自分の身を粗末にすると、周りの者に迷惑をかけてしまう)


 しぶしぶ姫は、薬を口にした。


 「苦い……」


 我慢できずに姫は吐いてしまった。


 ……。


 「冬悟がそなたをあの世に連れて行こうとしているような気がして、夜も眠れなかった」


 姫がかなり回復した頃、冬雅が姫の元を見舞いに訪れた。


 「早く元気になるんだ。そなたがおらぬ日々は、何か物足りないのだ」


 「もし私が死んでも、この世は何も変わりません」


 「何を言うか」


 冬雅は姫の手に触れた。


 「そなたがいれば、私は心が満たされる。この国をさらに発展させようという使命感が高まる」


 「……」


 「だから月、早く元気になるんだ。そして早く子供を」


 冬悟が姫を呼んだ「月光姫」という名前を、いつしか冬雅は避けるようになっていた。


 「月」とだけ呼ぶようになった。


 (……子供なんて、絶対に産まない)


 姫は密かにそう誓っていた。