月姫はなかなか回復しなかった。
というよりもむしろ、元気になろうという気力に乏しかったのかもしれない。
こんな虚しい現世など、一刻も早く去ってしまいたいとすら願ったりもした。
もしもこのまま回復しなかったら、冬悟の元へ行ける……という期待もあった。
「姫さま、どうかお飲みください。さもなければ周りの者たちが、殿に叱られてしまいます」
(私が自分の身を粗末にすると、周りの者に迷惑をかけてしまう)
しぶしぶ姫は、薬を口にした。
「苦い……」
我慢できずに姫は吐いてしまった。
……。
「冬悟がそなたをあの世に連れて行こうとしているような気がして、夜も眠れなかった」
姫がかなり回復した頃、冬雅が姫の元を見舞いに訪れた。
「早く元気になるんだ。そなたがおらぬ日々は、何か物足りないのだ」
「もし私が死んでも、この世は何も変わりません」
「何を言うか」
冬雅は姫の手に触れた。
「そなたがいれば、私は心が満たされる。この国をさらに発展させようという使命感が高まる」
「……」
「だから月、早く元気になるんだ。そして早く子供を」
冬悟が姫を呼んだ「月光姫」という名前を、いつしか冬雅は避けるようになっていた。
「月」とだけ呼ぶようになった。
(……子供なんて、絶対に産まない)
姫は密かにそう誓っていた。
というよりもむしろ、元気になろうという気力に乏しかったのかもしれない。
こんな虚しい現世など、一刻も早く去ってしまいたいとすら願ったりもした。
もしもこのまま回復しなかったら、冬悟の元へ行ける……という期待もあった。
「姫さま、どうかお飲みください。さもなければ周りの者たちが、殿に叱られてしまいます」
(私が自分の身を粗末にすると、周りの者に迷惑をかけてしまう)
しぶしぶ姫は、薬を口にした。
「苦い……」
我慢できずに姫は吐いてしまった。
……。
「冬悟がそなたをあの世に連れて行こうとしているような気がして、夜も眠れなかった」
姫がかなり回復した頃、冬雅が姫の元を見舞いに訪れた。
「早く元気になるんだ。そなたがおらぬ日々は、何か物足りないのだ」
「もし私が死んでも、この世は何も変わりません」
「何を言うか」
冬雅は姫の手に触れた。
「そなたがいれば、私は心が満たされる。この国をさらに発展させようという使命感が高まる」
「……」
「だから月、早く元気になるんだ。そして早く子供を」
冬悟が姫を呼んだ「月光姫」という名前を、いつしか冬雅は避けるようになっていた。
「月」とだけ呼ぶようになった。
(……子供なんて、絶対に産まない)
姫は密かにそう誓っていた。



