四百年の恋




 時が流れるにつれて、冬悟処刑の際に月姫が流した涙は、徐々に忘れ去られ。


 (私は殿の寵愛を得るために冬悟さまを見捨てた、強欲で無慈悲な女だと噂されるようになっていた)


 他人にどう思われようと構わない、真実は一つだけ。


 そう胸に誓っても、日々中傷に晒されるのはつらかった。


 人の中傷よりも、さらにつらかったのは。


 (もはやこの世に、私を心から愛してくれる人はいないという心細さ。殿に私は、ただの代用品としかみなされていなかった……)


 それがとても虚しかった。


 その年の夏は、天候が不順だった。


 連日じめじめした、曇りがちな日々。


 時に激しい雨が大地を叩く。


 (本州の梅雨も、こんな感じなのだろうか)


 太陽の光を浴びて農作物がすくすく育つこの時期に、日照不足に見舞われていた。


 そんな気候も手伝ってか、姫は風邪をこじらせて寝込んでしまった。


 肺炎になってしまったようだ。


 「姫さま、お薬を」


 侍女が床に伏す姫の枕元に近づいた。


 「苦いし飲みたくない」


 「殿が高名な医師に直々に調合させた、高価なお薬にございます」