四百年の恋

 「姫さま、朝食のお時間です」


 「要らない!」


 「ご気分でもすぐれないのですか?」


 「当たり前でしょう!」


 姫の返答を聞いて、侍女は様子を見るために障子を開けて部屋に入って来ようとした。


 「来ないで! 帰って! 放っておいて!」


 姫は怒鳴り散らし、食事を運んできた侍女たちを追い返した。


 「最低……!」


 その時ようやく、脱がされたまま散らかっていた寝間着を姫は引き寄せて羽織った。


 鏡に映る自分を見た。


 肌の上に衣装を身にまとえば、昨日までとは何も変わらないように見えるものの、冬雅に抱かれたことにより、昨日までの自分とはすっかり変わってしまったような気がした。


 誰かに見られると、汚らわしい目で見られるような気がして恥ずかしくて、姫は部屋から外に出られなかった。


 「姫、どうすることもできなかった私たちを、許してちょうだい」


 昼前になっても部屋から出てこない姫を心配して、母親が見舞いに訪れた。


 女同士のほうが話しやすいだろうという、父親たちの配慮かもしれない。


 「この母やお父上だけが咎を受けるのなら、それで構わないのですが……」


 母は申し訳なさそうにうつむく。


 「どうして事前に話してくれなかったの……」


 「姫……」


 「あまりにひどい! こんなだまし討ちみたいな」