四百年の恋

 「正式には、冬悟の法要が終わってからにするが」


 唇に触れた。


 「そなたに相応しい屋敷も着物も、全て手配済みだ」


 (そんなもの要らない。何もかも要らない……!)


 再び姫を抱く冬雅の腕が、強さを増してきたその時。


 「殿、そろそろ夜明けです。城に戻りませんと」


 軒先から冬雅を呼ぶ、小姓と思われる若い男の声がした。


 「……分かった」


 億劫そうに冬雅は答え、床を出て着物を調えた。


 政務も山積みだろうし、家臣(というよりも正室)の手前、日が高く昇ってからの帰城というのもあまり好ましくないのだろう。


 「今後はこの福山冬雅の側室として生きるんだ」


 そう言い残して、冬雅は去っていった。


 姫はなおも動くことができず、床に伏せたままだった。


 春なのに、身を切るような寒さの夜明け前……。