「あれ、見て見て!」


 二階の観客席から、コートを見下ろしていた二人。


 逆側の二階席にいる、下級生の集団に目が留まった。


 「あれ、吉野くんのファンだよ」


 「えーっ! 騙されてるんじゃないの!?」


 「真姫……。あんた吉野くんと一番仲いいのに、ずい分な言いようだね。吉野くんもてるんだよ。下級生もそうだし、対戦校の女子にもファンが結構いるみたいだよ」


 「うそ……」


 どうも信じられない。


 (あの吉野くんが……)


 「よっ、花里」


 圭介が真姫たちに気がついて、コートサイドから声をかけた。


 「今日の俺のスマッシュ、キレがあっただろ」


 「わ、分かんないよそんなの」


 「じゃ、これからミーティングだから」


 ラケットバッグを背負い、真姫に手を振ってから、体育館から出て行こうとする。


 下級生グループからの、冷たい視線を感じた。


 「吉野くん」


 体育館から出た圭介は、静香と遭遇した。


 というよりも静香が、その辺りで待っていたみたいなのだけど。


 「バド部は来週から秋季リーグでしょ。私たちテニス部は再来週。お互い頑張ろうね」


 静香はテニス部のキャプテンだった。