四百年の恋

 ふわり。


 輿の窓から、暖かい風が舞い込んできた。


 穏かで柔らかい、春の風。


 姫は輿の外の景色に目をやる。


 季節のうつろいを感じたその時。


 すでにそこは、福山城下。


 人の往来が激しい。


 その中に、変わった身なりの者たちがいた。


 「あれは……?」


 はじめて見る人種。


 背が高い。


 はっきりした目鼻立ち。


 そして髪の毛が、金色だとか薄い茶色だとか。


 「異人(外国人)……?」


 (京の都を行き来するという、異人なのだろうか。京よりはるか北方の、ここ福山城下にまで)


 姫は気になって、異人たちの群れを輿の窓から覗き続けた。


 まさか声をかけるわけにはいかなかったものの。


 ……。


 「叔父上、叔母上。ご無沙汰しております」


 姫たちは安藤の叔父夫婦の屋敷に到着。


 一年ぶりの再会で、深々と礼をした。


 「月姫、元気そうでなによりだ」


 本当のところ姫は苦しさと悲しみのあまり、今でも床に臥せっていたいところだった。


 (だけど、嘆いてばかりいても何も始まらない。冬悟さまの待つあの世へたどり着くまでの長い日々、前を向いて生きていかなくては)


 そう心に決めていた。


 「旅の疲れもあるだろう。今夜はゆっくり休まれよ」


 叔父夫婦は姫と両親を、それぞれの部屋へと案内した。


 廊下を使用人たちが、慌しく行き交っていた。


 姫とその両親が到着したので、その歓待で忙しいのだろう。


 姫はそう思い込んでいたのだが……。