四百年の恋

 静かに季節が過ぎていく。


 冬悟なしでも、時は確かに流れている。


 春が夏に、夏が秋に、そして厳しい冬がまたやって来る。


 「前田利家(まえだ としいえ)どのが、亡くなられたそうな」


 「これで徳川家康(とくがわ いえやす)に対抗できる人物が、いなくなりましたな」


 「やはり戦がはじまるのでしょうか」


 城の内外で、皆が噂し合っている。


 平穏さはまるで、嵐の前の静けさ。


 豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)の側近だった石田三成(いしだ みつなり)が事実上の責任者である豊臣方と、徳川家康方との対決が目前に迫っている。


 殿は以前から、家康に誼(よしみ;友好関係)を通じていた。


 遠方ゆえ出陣命令は下らず、在国にて防御を固め、会津(あいづ)の上杉氏が妙な行動を起こさないか監視してるようにとの指示を受けているらしい。


 姫はただ自室に閉じこもり、季節や時の流れ全てを拒絶した日々を送っていた。