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 「事情が事情ゆえに、福山家代々の墓所にとはいかぬが」


 「……」


 「一度は福山家の次期当主にと考えたほどの弟。罪を犯したとはいえ、立派な墓所に弔ってやろうと考えている」


 冬悟さまが切腹に処せられてから数日後。


 安藤の叔父の屋敷の奥深くに閉じこもり、泣き続けていた月姫の元に、冬雅が現れた。


 姫は会いたくなどなかったが、突然の訪問で逃げる余裕がなかった上に、姫に会見を拒む権利はなかった。


 「冬悟がいなくなってから、城内は光が失われたようだ」


 「……」


 「失ってはじめて、人は失くしたものの大切さを知るとはまことである」


 (自分で冬悟さまを追い詰めておきながら、今さら何を)


 「それにしても、冬悟はなぜあんな軽はずみな行動に出たのだろう。後継者にと期待していたのに、なぜ思慮浅い振る舞いを」


 「軽はずみ、ですって? 思慮浅い、ですって?」


 姫はふつふつと怒りがこみ上げて来た。


 「そういう行動に冬悟さまを追い込んだのは、殿まさにあなたではありませんか!」


 「何だと」


 無礼を承知で、姫は殿に怒りをぶちまけた。


 斬られてもよかった。


 むしろそれは本望。