四百年の恋

 「そうか……」


 冬雅は静かに背を向けた。


 「もう裁判は終わりだ」


 そう言って退出しようとした。


 「殿、お待ちください!」


 去り行く冬雅を引き止めたのは、安藤の叔父。


 「今しばらく、再度冬悟さまへの尋問をお続けくださいませ」


 冬雅に懇願した。


 「冬悟は何も喋らぬ。もう何も言うことはないのだと、受け取るしかできない」


 淡々とした口調で安藤にそう答えた。


 「これにはきっと、深い理由が。再度赤江どの臨席の上での取り調べをお願いします。赤江どのが冬悟さまをけしかけたのは明白でして、」


 「赤江が冬悟をそそのかしたと申すか」


 「そうとしか考えられません。奴は殿の関心を得るために、冬悟さまを陥れようと」


 「その言い方はまるで、私が内心喜んでいるかのような言い方だな」


 「そ、そういう意味ではありません! 冬悟さま、あなたさまからもどうか再度申し開きを。はっきりとその口で、無実を訴えなさいませ」


 「……」


 安藤に強く求められても、冬悟は弁明を拒んだ。


 「私の真実を証明できるのは。私自身ではなくて、天のみです。そして赤江もそれを知っているのです」


 冬悟はこう答えたのみだった。


 「冬悟さま、どうか申し開きを!」


 「安藤どの、しつこいですぞ」


 別の家臣が安藤を諌めた。


 「殿はもう、審議は終わりと申しているのです。なのにズルズル引き延ばすおつもりですか?」