四百年の恋

 「赤江は昨日、隠居を申し出た。自らが留守居役補佐官を任じられていた私の留守中に、そなたが謀反を起こすのを事前に察知できなかった責任を取りたいと申していた」


 (やはり、そういうことか)


 冬雅の説明を聞いた瞬間、冬悟は赤江に嵌められたことをはっきりと悟ったようだ。


 (様々な計略を弄して私をその気にさせ、行動を起こしたところで密告して、自分はさっさと逃走)


 冬悟の心の中では騙した張本人の赤江に対する怒りよりも、安易に騙された自分のうかつさに対する後悔のほうが大きかったようだ。


 (姫を取り戻そうと焦る気持ちと、兄に対する不満。それをまんまと利用されて)


 「何か申し開くことはないのか?」


 回顧しながら自らの短慮を悔やんでいた冬悟に対して、冬雅が言葉を投げかけた。


 「そなたにも言い分があるのなら、一応聞いてやろう」


 「……」


 冬悟は無言を貫いた。


 「私はお前を、次期当主にと考えていた。なぜ私を排除してまで、当主の位を急いで手にしようとした?」


 そう尋ねた途端、冬雅は冬悟の秘めた想いを理解したようだ。


 (この世の権力を手にすることよりも。冬悟が望んだのは、月姫を取り戻すこと)


 冬雅は証拠の品として押収されている、冬悟直筆の書状をパサパサッと地面にばらまいた。


 「このような恐ろしい陰謀を企むくらいだから、そなたにもそれ相応の言い分があっていいはずだ」


 それらの一つ一つに、冬悟直筆の印が。


 「重ねて申し上げますが、真実を知るのは天と赤江のみです」


 冬悟は繰り返した。


 なぜか弁明はしないままに。