四百年の恋

***


 翌日。


 白い着物を着せられた冬悟は牢から出され、冬雅の待つ裁判の場へと連れて来られた。


 冬雅は城の軒先に立ち尽くし、庭に座らされた冬悟を見おろすような形。


 冬悟の周囲には、逃亡させないよう役人が取り囲んでいる。


 冬雅の背後には、叔父を含む家臣団。


 赤江の姿だけが見えない。


 「……」


 冬悟と冬雅、兄弟の間にしばし沈黙が流れた。


 家臣団も固唾を飲んでそれを見守っている。


 「面を上げよ」


 ようやく冬雅が冬悟に命じた。


 かつては当主とその後継者とみなされた兄弟が、今や反逆者とそれを裁く側。


 「なぜ背いた」


 冬雅は淡々と尋ねた。


 「……」


 冬悟は無言のまま、ただじっと冬雅を見据えた。


 「もう一度訊く。そなたはどういう理由で、私に背いたのだ。次期当主の座を確約された立場でありながら、」


 「全ては!」


 冬悟は冬雅の言葉を遮った。


 「全ては……。天と赤江だけが存じております」


 赤江の名を出した途端、辺りはざわつく。


 「赤江が何を知っているのだ?」


 「私よりむしろ、兄上の方がご存知なのでは」


 何も恐れず、冬悟は冬雅にそう言い切った。