四百年の恋

 「姫、待ちなさい」


 叔父が姫を止めた。


 「我ら重臣たちでも、冬悟さまのいる牢には近づけぬ状態だ。お前にもどうすることもできぬ」


 「このままでは死を待つしか……。冬悟さまをお救いできるのは、もはやこの私だけ……」


 突然涙が流れ始めた。


 「冬悟さまをこのまま失うようなことがあれば、私は……」


 それ以上は言葉にならなかった。


 「冬悟さまは殿の後継者と一度は定められた身。殿も容易に冬悟さまを死罪になどできないだろう。明日の裁判の行方を見守るんだ。私もできる限り助命嘆願する。信じて待つんだ」


 「……」


 結局のところ今の姫には、黙って祈ることしかできなかった。


 (冬悟さまが処刑だなんて、あってはならぬこと)


 冬悟が処刑だなんて、考えたくもなかった。


 どうしてこんなことになってしまったのか。


 少し前まで姫は、冬悟に嫁ぐ日を指折り待っている立場だった。


 それが……。


 婚約の旨を告げる席での、冬雅の予想外の一言。


 自身の娘と冬悟を結婚させて、跡を継がせる代償として。


 (私には、殿の側室になれ、と……)


 姫は絶対に嫌だった。


 結ばれないくらいならば、死んでも構わないとさえ思いつめた。


 (だからといってまさか冬悟さまが、殿に謀反の心を抱くだなんて)


 想定外だった。


 (私を奪われた恨みに、おそらく赤江が火をつけたのだろうけど)


 「絶対に嫌……」


 側室だなんて、もってのほかだった。


 (冬悟さま以外の男に、触れられたくはない。だけど冬悟さまを救うためならば)


 姫は覚悟を決めた。


 (汚れてもいい。冬悟さまを救うことができるならば……)