四百年の恋

 「冬悟さま謀反の第一報は、どのようにして殿の元へ?」


 姫は叔父に尋ねた。


 「聞くところによると昨夜のうちに、大沼の殿の元へと、福山城からの急使が駆けつけたそうだ」


 (……殿は昨夜は平然と、宴の場で酒を飲んでいた)


 そしてまるで台本どおりのような仕草で、福山城へ戻っていった。


 急な予想外の謀反に驚いたような様子には、全く見えなかった。


 (全ては下書きどおりに動いているのでは?)


 「もし本当に赤江どのが、冬悟さまを煽ったのだとして。裁判の場で冬悟さまが赤江の関与を証言すれば、周囲の者も動揺するだろう。赤江の悪行が実証されれば、殿の印象も悪くなる。ゆえに裁判の場に臨席するのはまずいとみなして、赤江は急に隠居を願い出たのでは」


 叔父の予測は、全て正しいように姫には思われた。


 「赤江……! よくも無実の冬悟さまを……」


 「ところが、完全に無実だとは言い切れないようだ」


 「どういうことです?」


 「残念なことに、冬悟さまが周辺の武将たちに謀反の協力を要請した書状が多数、押収されているのだ」


 「何ですって……!」


 (そこまで、冬悟さまは殿を倒すための計画を……)


 「まさか冬悟さまが単独でそこまでやったとは思えないのだが、なんせ証拠がないのだ」


 「……」


 「このままでは、処刑は免れない」


 「処刑!」


 姫は頭の中が真っ白になった。


 「どうしてこんなことに……」


 姫はよろよろと立ち上がり、ふすまを開けて外に出て行こうとした。