「私は先代の側室の生まれ。血筋ゆえ私が当主になることを面白く思わない重臣たちが、以前から少なくなかったはず」
「冬悟さまの後ろには、その亡き母方の一族が付いていらっしゃるのでは」
「亡き母のか」
冬悟の母上は、身分の低い豪族の出身。
とはいえその一族は、海岸地帯に勢力を張った、海運関係に携わっている一族。
配下には海運関係の諸豪族と、無数の海の男たちが存在する。
ただ。
この時期、冬から春へと季節が変わったところ。
冬は海が荒れるためあまり出航できずにいた船たちが、春の訪れと共に航行を活発化させる。
それに伴い、港や浜辺も連日大忙しだった。
しかも一族の代表者たちは、交易のために本拠地を不在にしていた。
それは冬悟にとって、非常に不都合なことだったはずであるが、
「殿は遠く大沼の地。今こそまたとない機会……!」
その思いが、冬悟の冷静な判断力を狂わせた。
「早く事を起こさねば、月光姫が兄のものになってしまう」
そんな焦りが、暴走を招いてしまうこととなる。
「冬悟さまの後ろには、その亡き母方の一族が付いていらっしゃるのでは」
「亡き母のか」
冬悟の母上は、身分の低い豪族の出身。
とはいえその一族は、海岸地帯に勢力を張った、海運関係に携わっている一族。
配下には海運関係の諸豪族と、無数の海の男たちが存在する。
ただ。
この時期、冬から春へと季節が変わったところ。
冬は海が荒れるためあまり出航できずにいた船たちが、春の訪れと共に航行を活発化させる。
それに伴い、港や浜辺も連日大忙しだった。
しかも一族の代表者たちは、交易のために本拠地を不在にしていた。
それは冬悟にとって、非常に不都合なことだったはずであるが、
「殿は遠く大沼の地。今こそまたとない機会……!」
その思いが、冬悟の冷静な判断力を狂わせた。
「早く事を起こさねば、月光姫が兄のものになってしまう」
そんな焦りが、暴走を招いてしまうこととなる。



