「心底勉強したいんなら、ちゃんと試験受けて合格してからにすればいいのに」


 「吉野くん!」


 横にいた真姫が、見えない角度からわき腹を突っついた。


 やむをえない事情で、学びたくても大学に行けない人もいる。


 あからさまに学歴の優劣を口にするのは、よくないと思ったのだ。


 それにしてもこんな場所で、なぜ圭介は福山を挑発するような言い方をするのだろうと真姫は困惑した。


 「ふ、福山くんは、どんなことを学びたいと思って、受講し始めたの?」


 静香もその雰囲気を察したようで、話題を変えた。


 「そうだね……。故郷の松前のことかな。現代人にとって、当時の松前の繁栄は、どう映っているのかな、って」


 「福山くんも松前派ですか!」


 突然、学科内ナンバーワンの歴史オタク男が、背後から大声を出しながら駆け寄ってきた。


 「僕も戦国時代の松前、というよりも福山家のことに、とても興味を持っているのです!」


 「福山家に……。へえ、どんな?」


 「僕が長年尊敬しているのは、第三代福山家当主の、福山冬雅(ふくやま ふゆまさ)」