四百年の恋

 ……その日からというもの。


 福山城の留守を守る冬悟の元に、謎の手紙が相次いだ。


 それらの多くは匿名で、殿・福山冬雅の浪費や軍事費増大政策のために困窮している……などという、城下の人々からの嘆願書だった。


 嘆願書の多くは、こんな一言で締めくくられていた。


 「慈悲深い冬悟さまがもしも当主であらせられましたら、こんな事態にはなっていなかったでしょう」


 最初はいたずらか冷やかしだとみなし、大して気にもしていなかった冬悟だったが、書状が相次ぐにつれて徐々に気持ちが揺らいできた。


 そして……。


 冬悟の意思を決定付ける出来事が、ついに起こったのだった。


 「困ったものねー」


 夕暮れ、冬悟が執務室から屋敷に戻ろうとしていた時、侍女たちが井戸端会議をしていた最中。


 「殿のことだから、滅多なことは言えないんだけど」


 (また兄上のことか)


 冬悟は聞き耳を立てた。


 「今、殿は大沼よ。聞かれることないから、喋っちゃいましょう」


 侍女たちは、福山冬雅の噂話を始めた。


 「奥方さまは、たいそうお怒りなのよ。ほらあの、冬悟さまから強奪した姫……月姫さまのことで」


 「!」


 姫の名前を耳にして、冬悟の鼓動は速くなった。