それから娘を家まで送り届けて、冬悟は福山城へと戻って来た。
すると門の辺りに、もめている集団がいるのが目に留まったのだ。
「お願いしますだ。殿へのお目通りを」
「だから、殿はただ今大沼へ視察へ出かけていると申しているであろう?」
城門の門番たちがもめている相手は、みすぼらしい格好をした町人たち、いや農民たちか?
「どうした」
冬悟さまは馬に乗ったまま、押し問答している農民たちと門番のそばに駆け寄った。
「冬悟さま。この者どもが殿へのお目どおりを願い出ているのですが」
「どのような用件だ」
冬悟は農民たちに話しかけた。
「農作物の種の融資を、お願いしたいのですじゃ」
「種だと?」
「去年の秋は不作で、種として残しておくべきものも、年貢として納めるしかなかったのですじゃ。おかげで春になっても、植える種もありません」
「何だと?」
「このままじゃ、娘を身売りさせるしかありませんですじゃ」
「農村は、そんな困った事態になっているのか」
冬悟またまた衝撃を受けたのだった。
「先代さまの頃には、こんなに生活は苦しくありませんでしたのに……」
農民がつい口走ったその一言が、冬悟の胸に棘のように突き刺ささる。
「……今のような農民の陳情が、最近相次いでいるのです」
「赤江」
気がつくと冬悟の後ろには、赤江が控えていた。
「昨今の軍事費増大のツケで、農村が疲弊しているのです」
「兄上が、間違っていると言うのか?」
「いえ、私は事実を述べたまでです」
当主の批判になるようなことは、赤江には口走れないだろう。
冬悟はそれ以上何も言わず、その場を後にした。
すると門の辺りに、もめている集団がいるのが目に留まったのだ。
「お願いしますだ。殿へのお目通りを」
「だから、殿はただ今大沼へ視察へ出かけていると申しているであろう?」
城門の門番たちがもめている相手は、みすぼらしい格好をした町人たち、いや農民たちか?
「どうした」
冬悟さまは馬に乗ったまま、押し問答している農民たちと門番のそばに駆け寄った。
「冬悟さま。この者どもが殿へのお目どおりを願い出ているのですが」
「どのような用件だ」
冬悟は農民たちに話しかけた。
「農作物の種の融資を、お願いしたいのですじゃ」
「種だと?」
「去年の秋は不作で、種として残しておくべきものも、年貢として納めるしかなかったのですじゃ。おかげで春になっても、植える種もありません」
「何だと?」
「このままじゃ、娘を身売りさせるしかありませんですじゃ」
「農村は、そんな困った事態になっているのか」
冬悟またまた衝撃を受けたのだった。
「先代さまの頃には、こんなに生活は苦しくありませんでしたのに……」
農民がつい口走ったその一言が、冬悟の胸に棘のように突き刺ささる。
「……今のような農民の陳情が、最近相次いでいるのです」
「赤江」
気がつくと冬悟の後ろには、赤江が控えていた。
「昨今の軍事費増大のツケで、農村が疲弊しているのです」
「兄上が、間違っていると言うのか?」
「いえ、私は事実を述べたまでです」
当主の批判になるようなことは、赤江には口走れないだろう。
冬悟はそれ以上何も言わず、その場を後にした。



