四百年の恋

 「てめえ、何しやがる!」


 やくざは冬悟の脅しに、飛び掛ってきた。


 「お望みとあらば、お前もその首飾りのようにバラバラにしてさしあげても構わないが?」


 無表情でそう告げ、冬悟が刃先をやくざの喉元に向けたところ、


 「ち、ちっ、引き上げるぞ!」


 やくざたちは逃げ出した。


 「ありがとうございます……」


 やくざ一同が消えたのを確認して、売り子の娘が冬悟に礼を述べた。


 「……あのような連中、よく出没するのか?」


 「はい。最近物価高が続いておりまして。私たちも売り上げが減って、生活が苦しいのです。それに景気が悪くなると、決まってあのようなやくざ者がはびこると父も申しておりました」


 「……」


 「お武家さまは、立派な家の殿方さまなのでしょうか」


 「いや。名乗るほどの者では」


 娘の問いかけに、冬悟は面倒を恐れて身分を隠した。


 「福山家の人々も、お武家さまのように優しい方だったらよろしいのに。それならば世の乱れもきっと収まることでしょう」


 町娘が憂うくらいに社会情勢が芳しくないのだということを、冬悟は今まで全く気づかずにいて、今回このような形で社会情勢の悪化を知ることとなり戸惑ってしまった。