「吉野くん、真姫を大事にしてね」


 圭介は真姫の腹心の友・麻美(あさみ)に懇願された。


 「福山くんがあんなことになって……。あの頃の真姫は後追い自殺でもしかねない状況で、気が気じゃなかった」


 麻美は圭介に打ち明ける。


 「でも吉野くんが真姫を守ってくれてよかった。以前から好きだったんでしょ?」


 圭介は完璧に気持ちを隠していたつもりだったのだが、案外周囲にはバレバレだったらしい。


 「ただ……久しぶりに見た真姫が、かなり痩せたのが気になる。どこかはかなげな印象になっちゃった」


 圭介もそれは気になっていた。


 健康的な、メリハリのある体つきをしていた真姫が、最近は明らかにやせ細って来ている。


 以前より五キロは減ったのではないだろうか。


 そして。


 「以前の真姫はもっと、屈託なく笑っていた気がする。でもあの一件の後は、笑顔もどこかぎこちなく……」


 確かに昔の二人は、些細なことに対しても、大らかに笑い合うことができた。


 その頃からすると、真姫はかなりおとなしくなった。


 周囲には「大人びた」とか言われるのだけど、それと引きかえに無邪気さが失われたように思われた。


 (……福山とのことを、まだ引きずっているのだ)


 「吉野くんと付き合い始めてから、羨ましいくらいに真姫は綺麗になった。でもその分、はかなく消えてしまいそうで不安なの。真姫をずっと離さないでいてね」


 「当たり前だ」


 圭介は麻美を不安にさせないためにそう言い切ったけど、一番恐れているのは、他ならぬ圭介自身だった。


 (真姫が消えてしまいそうで怖い)


 福山がまた姿を現して、今度こそ真姫を奪い去っていきそうで……日々怯えていた。