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 四月から、無事に進級して四年生。


 圭介や真姫たちは皆、最終学年になった。


 春には教育実習があり、その後七月の教員採用試験など、慌しい一年になりそうだ。


 卒業論文も書かなければならない。


 同級生のオタク男は、福山冬雅論を執筆するとかなり早い段階から張り切っており、準備万端のようだ。


 そんなわけで四年生になった最初の日は、ガイダンスのために学科の全員が久しぶりに一同に顔を揃えた。


 「花里さん、綺麗になったね」


 あちらこちらで、真姫のことが噂になっている。


 自分の彼女が賞賛されている声を数多く耳にすると、圭介はやはり誇らしいもので。


 「“女”になったからじゃないの」


 「しーっ!」


 聞こえてくる冷やかしですら、あまり気にならない。


 この学科の全員が、福山の一件を知っている。


 少しの間とはいえ、共に机を並べて学んでいた「級友」が実は亡霊で、真姫を狙って迷い込んできたのだから。


 (霊や転生などにわかには信じられないという連中も、福山が朽ち果て、姿を消していく姿を目の当たりにしてしまえば……)


 この世には、人間の常識を超越した事態が起こりうる。


 科学では説明できないことも存在する。


 クラスの誰もが、考え直さずにはいられなかった。


 そして圭介や真姫に聞こえないように、水面下で噂を続けている。


 福山の正体について。


 福山の目的について……。